利食い幅、損切り幅、取引サイズを決めるとき、値幅、価格比、ボラティリティのうち、どれを基準として使うべきかを考えてみる。
値幅
先ず、値幅について考えてみる。値幅とは1円や100pipsといったものだ。
例えば、ドル円を1円で利食い、1万通貨で売買する戦略によって買ったとする。
勝てば1ドルが100円のときでも200円のときでも1万円の利益となる。
だが、利食うためには100円では1%、200円では0.5%の変動が必要で、2倍違う。100円のときのほうが利食うまでに時間がかかり、トレード機会も減るだろう。
価格比
次に、価格比について考えてみる。価格比とは価格の1%といったものだ。
例えば、価格の1%で利食い、1万通貨で売買する戦略によって買ったとする。
勝てば100円のときは1万円、200円のときは2万円の利益となる。
今度は200円のときのほうが利益が大きくなってしまう。「この戦略は1ドル200円のときにパフォーマンスがいい」と結論付けてはおかしなことになる。
そこで、価格の1%で利食い、100万円÷価格の取引サイズで売買する戦略によって買う、というように修正してみる。
100円のときは1円で利食い、1万通貨だから1万円の利益となる。
200円のときは2円で利食い、5000通貨だから1万円の利益となる。
これで、勝てば1ドルが100円のときでも200円のときでも1万円の利益となる。
ところで、ドル円が100円のときに、ある時期では1日に1%変動し、ある時期では2%変動するような場合も考えてみる。
再び価格の1%で利食い、100万円÷価格の取引サイズで売買する戦略によって買うとしよう。
価格がランダムウォークであると仮定すると、1日で1%変動するときは2%変動するのに約1.4日(√2日)かかる計算になる。
だが、1日で2%変動するときは2%変動するのにもちろん1日しかかからない。
すると1日で2%変動するときは1%変動するときより約1.4倍多くトレードできることになり、利益も増えることになる。
これはドル円が200円のときでも同じだ。
値幅のときと同様、やはりトレード機会の違いという問題が残る。
ボラティリティ
それでは最後に、ボラティリティについて考えてみる。ボラティリティとは1ATRといったものだ。
例えば、ATRを日足で計算して1ATRで利食い、100万円÷1ATR÷100の取引サイズで売買する戦略によって買うとしよう。
先ず、1ATRが1円だったとする。
すると取引サイズは1万通貨となるから、1万円の利益である。
1日で1ATR=1円変動するのにかかる時間は1日である。
次に、1ATRが2円だったとする。
すると取引サイズは5000通貨となるから、やはり1万円の利益である。
1日で1ATR=2円変動するのにかかる時間もやはり1日である。
こうなると、1日のボラティリティがどれくらいであろうと利益は変わらず、トレード機会も変わらない。
そして、これは価格が100円でも 200円でも同じである。
まとめ
利食いや損切りをpips単位で、つまり値幅で決める人は多い。
だが、1ドルが100円のときでも200円のときでも1円、または100pipsで利食ったり、損切ったりするのには違和感を感じる。
そこで価格比はどうかと考える。
取引サイズも価格比に反比例させて調整するとよさそうだ。
だが、価格が同じ100円でも1日で1%変動する銘柄もあれば、2%変動する銘柄もあり、同じ銘柄でもあるときは1%変動し、あるときは2%変動するといったようにボラティリティに違いがあり、トレード機会にも影響する。
そこで、利食い幅、損切り幅をボラティリティに比例させ、取引サイズをボラティリティに反比例させると、利益、トレード機会ともに一定にできるのでよさそうだ。
だが、問題点もある。
同じ銘柄でもボラティリティの高い時期もあれば、低い時期もあるが、もしボラティリティをATRで計測するなら、ATRの計算期間をどれくらいにするのがよいのか。
よく使われれる14がいいのか、足の種類も日足がいいのか、それとも最適化するのがいいのか。
だが、最適化はかえってシステムを不安定にしかねない。
また、利食いや損切りを値幅で決めるというのは、ある意味、原始的なやり方だが、バックテストしてみると、意外とそのほうがパフォーマンスがいいということもある。
ドル円、クロス円を20銭で利食う習慣の人は価格が100円でも200円でも20銭で利食うものであり、また、ラウンドナンバーなどのように切りのいい数値で売買し、利食い、損切る人も多い。
相場も人間の習性に基づいて動いていく。
人間にそういう習性がある以上、原始的なやり方だからといってバカにもできない。